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小さいおうち(中島 京子)

「女中さん」という仕事があった。
住み込みで家事手伝いのなかに、
芽生える一体感と、帰属性。
家事をこなすプロフェッショナルの矜持に
いわば「女中道」すら感じてしまう。

したたかに、たくましく、時流を見極め
繁栄していた平井家。
時子さん、旦那様、恭一ちゃん、そしてタキ。
波風立てつつ、知的で裕福な家庭の
平和で慎ましやかな日常が、
じっくり積み上げられる。
戦争の足音は、
聞こうとしなければ聞こえない。

オリンピック、万国博、おもちゃ
産業の成長、大陸への販路拡大…
男たちの夢も、女たちのちょっとしたぜいたくも
今とそんなに変わらない。
その、ゆるぎないはずの社会が、
会社が、家族が
崩壊してゆく衝撃は
あまりに大きかった。

小さいおうち (文春文庫)小さいおうち (文春文庫)
(2012/12/04)
中島 京子

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「女中道」の鏡とされた事件が伏線となる、
最後のどんでん返しがたまらない。
何かを隠していたタキ。
そして、漫画家となった板倉さんの願いの「おうち」は
やはり再生できなかったのだ。

「フランスとドイツの婦人が手を組めば
戦争はなくなる」と言っていたのに、
「兵隊さんをおもいなさい」といい、銃後髷を結う。
「興亜奉公日」、「奉祝楽曲発表会」、
神国日本の翼賛型美人、愛国行進曲…
タキの愛した日常が、次々と侵略されていく。
時流にうまく乗り、婦人雑誌で戦争を賛美する睦子さん。
『花アン』の醍醐さんは、この話を参考にしている気がする。

マドリング・スルー(どうにか切り抜ける)もきかなくなった中、
ついに訪れる、平井家の「開戦」よりも大変なこと。
それが、最後までタキの心を痛めることとなるのだが…

この時代だから、読んでおきたい
読んでほしい本でもある。

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| 読んだ本 | 07:32 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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